整骨院の自費相場は6,842円|20代が1万円払う院の違い

整骨院の自費相場は6,842円|20代が1万円払う院の違い

石井 武

石井 武

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2026年7月9日、リクルートの調査研究機関「ホットペッパービューティーアカデミー」が「鍼灸・接骨院に関する利用実態調査2026」を発表しました。15〜69歳の男女5,500人を対象にした、業界の"今"がわかる調査です。

まずは、発表資料で示された主な結果を引用します。

  • あはき柔整(あん摩・指圧/鍼灸/接骨・整骨)の直近1年の利用率は15.7%。なかでも20代が22.7%と突出して高い

  • 保険適用なしでの1回あたりの利用金額(平均)は6,000〜8,000円台に上昇

  • 施設への不満の1位は「メニュー・クーポンが分かりにくい」。特に20〜30代で顕著

(出典:ホットペッパービューティーアカデミー「鍼灸・接骨院に関する利用実態調査2026」2026年7月9日)

この3つを並べると、少し引っかかる"ねじれ"が見えてきます。今回は、そこから整骨院・鍼灸院のこれからを考えてみます。

目次

値上げの時代でも、自費はしぼんでいない

物価高が続き、あらゆるものが値上がりする2026年。「こんな時代に施術料なんて上げられない」——そう感じている先生は多いと思います。でも、先ほどの金額をもう少し細かく見ていくと、実態はむしろ逆でした。

保険適用なしでの1回あたりの利用金額は、内訳を見ると接骨・整骨が6,842円、指圧が7,241円、鍼灸が8,132円。利用理由で最も多かったのは「心身がリフレッシュできる・癒やされる」で36.4%でした。痛みへの対処に加えて、日頃の体調を整えることにお金を使う人が増えているようです。

自費の需要そのものは、値上げの時代でもしぼんでいない。だとすれば、考えるべきは「需要があるかどうか」ではなく、「その需要を、自院がちゃんと受け止められているか」のほうです。

発見①|20代は、価格ではなく"価値"で選んでいる

いちばん目を引いたのは、若年層の動きです。あはき柔整(あん摩・指圧、鍼灸、接骨・整骨)の直近1年の利用率は全体で15.7%。ところが20代だけは22.7%と突出して高い。しかも「保険適用なしでの利用」が20代で大きく増えています。

さらに、接骨・整骨の1回あたり利用金額を見ると、全体平均6,842円に対し、20代は9,891円。全体を大きく上回り、1万円に迫ります。

ここから読み取れるのは、若い世代は「安いから行く」わけではない、ということです。価格ではなく、体験や価値に納得すれば、しっかりお金を払う。院にとっては、間違いなく追い風のはずです。ただ、「はず」と書いたのには理由があります。

発見②|その20代の不満1位が「メニューが分かりにくい」

同じ調査で、施設への不満の1位に挙がったのが「メニュー・クーポンが分かりにくい」でした。しかもこの不満は、20〜30代で特に強い

ここが、冒頭で触れた"ねじれ"です。整理すると、こういうことになります。

  • 20代は利用意欲が高く、1万円近い単価を払う用意がある

  • ところが、その20代がいちばん不満に感じているのが「メニューが分かりにくい」

払う気のある人たちが、施術の中身にたどり着く前、「入口」でつまずいている。せっかくの意欲層を、選ばれる前に取りこぼしているかもしれない、というわけです。

これは「施術」ではなく「情報設計」の問題

「メニューが分かりにくい」と聞くと、メニューを増やそう、割引をつくろう、と考えたくなります。でも、原因はもう少し手前にあります。これは施術の問題でも、価格の問題でもなく、情報設計、つまり見せ方の問題です。

初めての院を探す人は、施術を受ける前に、まずメニュー表やクーポンを見て「自分の悩みに合うのはどれか」を判断しようとします。その段階で、種類が多すぎる、違いが分からない、料金の見方が難しい——そうなったとき、人はどう動くでしょうか。

迷ったとき、人は「選ぶ」のではなく「選ばない」を選びます。 そのまま予約せず、離れてしまう。いわば「予約前の意思決定コスト」です。どれだけ良い施術ができても、この入口のコストが高い院は、良さを知ってもらう前に候補から外れてしまう。もったいない話です。

最初の一歩は簡単です。「初めての方は、まずこれ」という入口メニューを一つ決めて、目立たせる。選択肢を減らすというより、迷わない順番をつくる。それだけでも、ずいぶん変わります。

悩みが多様化するほど、入口は複雑になる

もう一つ、見落とせない背景があります。来院の動機が、痛みの改善だけにとどまらなくなっていることです。今回の調査でも、利用理由は体のリフレッシュから、自律神経の乱れ、眼精疲労まで幅広く挙がっており、患者さんが抱える悩みは年々多様化しています。

悩みが増えれば、それに応えるメニューも増えていきます。ここに落とし穴があります。選択肢は多いほど親切だと思われがちですが、実際は逆で、人は選択肢が増えすぎると、かえって選べなくなり、その場を離れてしまう。行動経済学でよく知られた話です。

良かれと思ってメニューを充実させるほど、かえって「分かりにくさ」が増えてしまう。だからこそ、どの悩みの人に、どのメニューを、どう見せるか。この入口の設計が効いてきます。入口をどう整えるかは、施術そのものと同じくらい、院の印象を左右します。

これからの院ができること|「入口」をなめらかにする

では、何をすればいいか。特別なことは要りません。「入口の分かりにくさ」を、一つずつ取り除いていくだけです。

  • 悩み別に「あなたにはこれ」と示す。症状や目的から、迷わず選べる導線をつくる

  • 初回の人向けの入口メニューを一つ、はっきり用意する

  • 料金とクーポンの見せ方を、スマホ画面でパッと理解できる形に整える

  • 予約から来院までの流れを、その場で完結できるようにする

大切なのは、これらを紙のメニューやバラバラのツールで頑張ろうとしないことです。手作業で更新し続けるのは大変ですし、更新が追いつかないと、かえって「情報が古い・分かりにくい」を生んでしまいます。

さいごに|DXは「効率化」ではなく「向き合う時間」のため

業界のDXは、効率化のためだけにあるのではありません。予約やメニューの導線をデジタルで一本に整えると、事務や案内に取られていた時間が減ります。その空いた時間を、目の前の患者さんと向き合う時間に戻す——DXの本当の目的は、そこにあります。

今回の調査は、私たちに宿題を残してくれました。需要はある。払う気のある人もいる。あとは、その人たちが迷わずたどり着ける入口を用意できるかどうか。最初から完璧な仕組みを目指す必要はありません。まずは、一番のおすすめメニューを一つ、目立たせてみる。その一歩からで十分だと思います。


出典

※本記事は上記公開データを引用のうえ、当社の視点で考察したものです。数値は発表時点のものです。


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石井 武

著者

石井 武

株式会社クロスリンク 取締役 CTO。

埼玉県出身。二児の父。

WebメディアやBtoBシステム、ECサイトなど、Web業界で15年以上にわたり、プロダクト開発、マネジメントに従事。

2023年に株式会社クロスリンクに開発責任者として入社し、プロダクト開発をリード。

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