【技術以前の信頼学】「腕が良いのに選ばれない」ビジネスマナーの落とし穴

【技術以前の信頼学】「腕が良いのに選ばれない」ビジネスマナーの落とし穴

矢野 敦子

矢野 敦子

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休日にセミナーへ通い、手技の精度を極め、患者様の痛みを一日も早く取り除こうと研鑽を重ねる。そんな熱心な施術者の方々には、本当に頭が下がる思いです。

しかし、現場で多くの院を見ていると、非常に切なく、残酷な現実にぶつかることがあります。

「技術は超一流なのに、なぜか患者様が定着しない院」 「技術はまだ駆け出しなのに、なぜか患者様から絶大な信頼を得て繁盛している院」

この差は一体どこから生まれるのでしょうか。その正体は、手技の差ではなく「ビジネスマナー(社会人としての信頼感)」にあります。

今回は、多くの施術者が無自覚のうちに患者様を失ってしまっている「マナーの落とし穴」と、今日からできる信頼構築の基本について解説します。

1. なぜ「マナーがある先生」に患者様が集まるのか?

整骨院や鍼灸院、あん摩マッサージ指圧院の施術者の多くは、専門学校で専門知識と技術を徹底的に学びます。しかし、一般的な「ビジネスマナー」を体系的に学ぶ機会はほとんどありません。

一方、来院される患者様の多くは、一般企業などで社会人経験を積んできた方々です。患者様はあなたの院に入った瞬間から、施術者であると同時に「一人の社会人」としてあなたを見ています。

残酷なことですが、プロである先生にとっての圧倒的な技術差は素人である患者様には区別がつきません。しかし、「挨拶がない」「連絡が失礼」といったビジネスマナーの欠如は、一瞬で見抜かれてしまいます。

  • 「技術は素晴らしいが、やり取りに違和感があって不安になる院」

  • 「技術は普通だが、社会人として丁寧で安心して身を任せられる院」

患者様が一生付き合いたい「かかりつけ院」として選ぶのは、間違いなく後者です。どれだけ素晴らしい手技を持っていても、マナーという土台がなければ、その技術の価値すら試してもらえないのです。

2. 信頼を一瞬で失う「メール・メッセージ対応」4つのチェックリスト

特に社会人経験のある患者様が違和感を抱きやすいのが、予約や問い合わせ時の「メールやメッセージのやり取り」です。ご自身の対応が以下の4つに当てはまっていないか、今一度チェックしてみてください。

① 差出人名(表示名)が本名になっているか?

メールアドレスの差出人表示が、ニックネームや英数字の羅列、あるいはプライベートな表示名になっていませんか? 患者様の元に届いたとき、誰から届いたか分からないメールは不信感の第一歩になります。必ず「〇〇整骨院 院長 〇〇」など、本名と院名が正しく表示されるよう設定しましょう。

② 件名を必ず入れているか?

件名がない「無題」のメールや、「予約の件」だけの一言メールは、相手の受信ボックスの中で埋もれてしまいます。「【〇〇治療院】ご予約日時のご案内(お名前様)」のように、一目で内容が伝わる件名を入れましょう。

③ 冒頭で「お世話になります」と「名乗り」を入れているか?

本文がいきなり「〇日の15時で空いています」から始まっていませんか? 社会人の基本として、本文の冒頭には必ず「〇〇様、いつもお世話になっております。〇〇整骨院の〇〇です」という挨拶と名乗りを入れるのが鉄則です。これがあるだけで、文章全体の印象がガラリとスマートになります。

④ 末尾に「署名」を設定しているか?

メールの最後に、院の正式名称、代表者名、住所、電話番号、公式LINEやWebサイトのURLをまとめた「署名(シグネチャー)」を入れておきましょう。連絡先が明記されていることは、組織としての信頼性の証明になります。

3. 電話対応の第一歩:「もしもし」を卒業する

電話対応も、第一印象を大きく左右するポイントです。

電話を受ける際、開口一番「もしもし、〇〇整骨院です」と言っていませんか? 実は、ビジネスの場において「もしもし」はマナー違反とされています。

  • 電話を受ける時: 「お電話ありがとうございます。〇〇整骨院の〇〇です」

  • 電話をかける時: 「いつもお世話になっております。〇〇整骨院の〇〇と申します。今、お時間よろしいでしょうか?」

相手の時間を奪っていることへの配慮を示し、まず自分から名乗る。この当たり前の対応ができるだけで、患者様は「ここはきちんとした院だ」と確信し、安心して来院することができます。

4. デジタルツールを活用した「プロとしての佇まい」

お互いに忙しい現代において、電話よりもLINEやメール、電子カルテを通じたデジタルなやり取りが増えています。

電子カルテ「カルッテ(kartte)」を活用して施術後のビフォーアフター画像やアドバイスを患者様のスマートフォンへ送信する際も、こうした「丁寧な一言」を添える姿勢が大切です。

単にデータを送るだけでなく、「〇〇様、本日はご来院いただきありがとうございました。本日お話しした姿勢のポイントを画像でお送りしますね」という一文を添える。

デジタルな利便性と、社会人としての温かく丁寧なマナー。この2つが掛け合わさったとき、患者様からの信頼は揺るぎないものになります。

5. さいごに:技術を活かすための「最強の武器」を持とう

「ビジネスマナーを守る」ということは、かしこまった堅苦しい接客をすることではありません。「患者様という一人の人間を尊重し、不安にさせない配慮をする」ということです。

真面目に技術を磨いてきた先生だからこそ、マナーの不足で患者様が離れてしまうのはあまりにも勿体ないことです。

メールの件名を入れる、名乗る、署名をつける、電話で「いつもお世話になっております」と言う。 今日からできる当たり前の基本を徹底するだけで、あなたの素晴らしい技術は正しく評価され、より多くの患者様に届くようになります。ぜひ自院の対応を一度見直し、一生モノの信頼をつかみ取りましょう。

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矢野 敦子

著者

矢野 敦子

株式会社クロスリンク代表取締役 兼 マッサージコンシェルジュ®️

新卒で凸版印刷株式会社に入社し営業職に従事。途中、株式会社博報堂へ出向し大手自動車会社のプロモーション戦略の企画立案から実施までを行う。

その後、株式会社エムアウトに参画。新規事業の立ち上げを経験したのち、2010年に株式会社クロスリンクを設立。2012年に株式会社エムアウトからMBOを実施し、現在に至る。

2022年度東京女性経営者アワード「持続経営部門」受賞

【公式】X(旧:Twitter)

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