【自作・無料ツールの落とし穴】漏洩に気づけない? 施術者が「エンジニアごっこ」をやめるべき理由

【自作・無料ツールの落とし穴】漏洩に気づけない? 施術者が「エンジニアごっこ」をやめるべき理由

矢野 敦子

矢野 敦子

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「生成AIを使えば、コードが書けなくても予約システムや問診票が自作できる」 「無料のフォームツールやプラグインを組み合わせれば、コストをかけずにWeb化できる」

ITツールの進化に伴い、こうした情報をもとに自作システムや無料ツールの導入に挑戦する院長先生が増えています。

もちろん、AIを使うこと自体が悪いわけではありません。ブログのアイデア出しやSNSの投稿文作成、院内POPのキャッチコピー考案など、個人情報に関わらない領域で活用する分には、AIは業務効率を劇的に高めてくれる頼もしいパートナーです。

しかし、患者様のデリケートな情報が行き交う「予約」や「問診票」といった領域に、専門知識がないまま無料ツールやAI生成コードを組み込むことには、「万が一の際の事業停止リスク」と「経営資源(時間)の甚大な浪費」という、目に見えない致命的な落とし穴が潜んでいます。

今回は、なぜ施術者が個人情報を扱うシステムの自作や保守に手を出すべきではないのか、セキュリティと経営の2つの視点から解説します。

1. 知識がないと「漏洩していること」にすら気づけない

PHPなどのWebプログラムやオープンソースの脆弱性は、日々世界中で発見されており、サイバー攻撃の手法も刻一刻と巧妙化しています。

専門のセキュリティエンジニアは、常に最新の脆弱性情報を追跡し、システムのアップデートやパッチ適用を繰り返して安全性を維持しています。一方で、AIに指示を出して作ったコードや、更新が止まった無料ツール・プラグインを運用している場合、現場では次のような極めて危険な状態に陥ります。

  • セキュリティ対策が万全かどうか、自分で検証・テストできない

  • プログラムのどこに弱点(穴)があるのか、構造的に理解できない

  • 最悪の場合、データが外部へ漏洩していても「漏れていること」にすら気づけない

来院時に患者様が記入する問診票には、氏名や電話番号だけでなく、既往歴や痛みの部位といったプライベートな健康状態が含まれています。これらは個人情報保護法において最も厳格な管理が求められる「要配慮個人情報」です。

万が一、自作システムや無料フォームから患者様の個人情報が流出した場合、「AIが作ったから分からなかった」「無料ツールのバグだった」という言い訳は通用しません。法的な賠償責任や社会的信用の失墜により、長年築き上げてきた院の看板が一瞬で吹き飛ぶリスクを常に背負い続けることになります。


2. 「月数万円を浮かすため」に貴重な経営資源をドブに捨てていないか

もうひとつの見落とされがちな罠が、「経営資源(時間と集中力)の浪費」です。

システムは「作って終わり」ではありません。OSやブラウザの仕様変更に伴う表示崩れや挙動の変化、外部APIの連携のトラブル、セキュリティパッチ適用や、監視など運用には際限のない保守作業がつきまといます。

夜遅くまで施術を行い、疲労が溜まっている中で、慣れないエラー画面と格闘しながらAIに修正指示を出し続ける……。そのような時間に、院長先生の貴重な脳のリソースと体力がすり減らされてはいないでしょうか。

「自分は施術に専念して、ツールの作成や管理は受付スタッフに任せているから問題ない」と考える先生もいるかもしれません。

しかし、それはスタッフの貴重な時間とエネルギーを奪っているだけです。ITの専門知識がないスタッフに不慣れなツール作成やエラー対応を押し付ければ、本来注力すべき「笑顔での患者対応」や「院内の細やかな気配り」がおろそかになり、フロント業務の質が低下してしまいます。スタッフのストレスによる離職を招く原因にもなりかねません。

何より、どれだけスタッフに作業を任せていたとしても、万が一情報漏洩が起きた際にすべての法的・金銭的責任を負うのは院長先生自身です。

院長先生やスタッフの時間は、経営における最も貴重なリソースです。 仮に自作や無料ツールによって月額数万円のシステム費用が浮いたとしても、その裏で月10時間、20時間という時間をシステムの調査や手直しに費やしているなら、経営視点では「大赤字」です。

その時間を、技術の研鑽、既存患者様への丁寧なアフターフォロー、スタッフの本来の育成、あるいは自身の身体を休める休息に充てた方が、中長期的に生み出される売上と信頼は何倍も大きくなります。


3. プロの領域は「専門の仕組み」に丸投げするのが一番安上がり

ビジネスの世界には古くから「餅は餅屋」という言葉があります。

プロのシステム開発会社が提供するサービスには、単なる機能だけでなく「24時間365日のサーバー監視」「最新のセキュリティパッチの自動適用」「個人情報保護法に準拠した厳格なデータ管理」「不具合発生時の迅速な復旧体制」が含まれています。

例えば、クラウド型電子カルテ「カルッテ(kartte)」のような信頼性の高い専用システムを導入すれば、Web問診や予約、カルテの管理に伴うセキュリティ対策やシステムメンテナンスは、すべて専門のエンジニアチームが裏側で責任を持って担保します。

先生やスタッフがセキュリティの不安に怯えたり、エラー対応に追われたりする必要は一切ありません。専門領域をプロに丸投げすることは、単なるコストではなく、「万が一のリスクを回避し、院本来の生産性を最大化するための最も賢い保険」なのです。

4. さいごに:先生が本領を発揮すべき「唯一無二の場所」へ

患者様があなたの院に通っているのは、自作のWebシステムが優れているからではありません。先生の手技、専門知識、そして目の前で親身に向き合ってくれる人柄に救われているからです。

AIは集客のアイデア出しや広報文の作成など、個人情報に触れない安全な業務で賢く使い倒せば十分です。セキュリティの担保もできないまま予約や問診システムの「エンジニアごっこ」に時間を奪われ、本来最も価値を発揮すべき施術や患者対応のエネルギーが削がれてしまうのは、先生にとっても患者様にとっても最大の損失です。

システムの保守やセキュリティ対策は専門のプラットフォームに任せ、先生はプロの施術者として、目の前の患者様を健康に導くことだけに100%専念する。

経営の土台を安全に整え、本業の価値をさらに高めるために、自院のIT環境と時間の使い方を今一度見直してみませんか。


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矢野 敦子

著者

矢野 敦子

株式会社クロスリンク代表取締役 兼 マッサージコンシェルジュ®️

新卒で凸版印刷株式会社に入社し営業職に従事。途中、株式会社博報堂へ出向し大手自動車会社のプロモーション戦略の企画立案から実施までを行う。

その後、株式会社エムアウトに参画。新規事業の立ち上げを経験したのち、2010年に株式会社クロスリンクを設立。2012年に株式会社エムアウトからMBOを実施し、現在に至る。

2022年度東京女性経営者アワード「持続経営部門」受賞

【公式】X(旧:Twitter)

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