【男性施術者のジレンマ】女性患者の「生理痛・PMS」をどう聞き出す? 心理的ハードルを下げる“第三者”コミュニケーション術

【男性施術者のジレンマ】女性患者の「生理痛・PMS」をどう聞き出す? 心理的ハードルを下げる“第三者”コミュニケーション術

矢野 敦子

矢野 敦子

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7月に入り、いよいよ本格的な夏を迎えました。外の猛暑と室内の冷房による「10℃以上の激しい寒暖差」は、筋肉量が少なくホルモンバランスの変動がある女性の自律神経を直撃し、だるさ、むくみ、頭痛といった「夏の不定愁訴」を急増させます。

この時期、多くの女性患者様が不調を抱えて来院されます。
しかし、ここで全国の男性施術者が直面する、ある「見えない壁」が存在します。
それは、「生理痛やPMS(月経前症候群)、更年期の不調といった女性特有の悩みを、どうやって聞き出すか」という問題です。

「骨盤の歪みや自律神経の状態を診れば、おそらく生理痛も重いはずだ。しかし、若い女性患者様に男性の自分からストレートに聞いて、セクハラだと思われないだろうか? 気まずくならないだろうか?」

こうした配慮から、あえて深く踏み込めず、表面的な肩こりや腰痛の治療だけで終わらせてしまっているケースが非常に多く見受けられます。しかし、これは患者様にとっても院にとっても、大きな機会損失です。

今回は、男性施術者が女性患者様の心理的ハードルを下げ、治療に不可欠なデリケートな情報を自然に引き出すための「伝え方の極意」と「システムの活用術」を解説します。

目次

1. なぜ女性は「男性施術者」に言い出しにくいのか?

まず、前提として知っておくべき残酷な事実があります。
それは、「先生の技術や人柄がどれだけ優れていても、生物学的・社会的な心理の壁は存在する」ということです。

女性患者様が男性施術者に生理痛やPMSの悩みを言わないのは、先生を信頼していないからではありません。
単に「男性に言っても、自分の辛さを本当に共感してもらえるか分からない」「恥ずかしい」「異性として意識してしまって言いづらい」という心理前ブロックが働いているからです。

この心理的ブロックがある状態で、問診時に面と向かって「生理痛は重いですか?」「生理前だからイライラしますか?」と直接的な言葉を投げかければ、患者様は防衛本能から心を閉ざし、場合によっては「デリカシーがない」と離脱(ドロップアウト)の原因になってしまいます。

男性施術者に求められるのは、患者様に「言わせる」ことではなく、「先生になら、この状態を委ねても大丈夫だ」という安心感(心理的安全性)を論理的に構築することなのです。

2. 「目線」を外す。心理的負担を消す“トライアード(三者間)”の法則

心理学のカウンセリング技術において、デリケートな話題に触れる際、絶対にやってはいけないのが「1対1で真っ直ぐ目を見つめて質問すること」です。
対面でのアイコンタクトは、時に相手に強い威圧感や尋問されているようなプレッシャーを与えます。

ここで有効なのが、「トライアード(三者間)コミュニケーション」という手法です。
「施術者」と「患者様」の間に、「第三の視点(=カルテのデータや画面)」を介入させます。

具体的には、患者様の顔を見るのではなく、手元のタブレットやスマートフォンの「電子カルテの画面」を一緒に覗き込むようにして対話を行います。

【NGな聞き方(対面で目を見て)】
「〇〇さん、生理痛とかって重い方ですか?」
➔ (患者様の心理:見つめられて聞かれると恥ずかしい、答えづらい)

【OKな聞き方(一緒にカルテの画面・写真を見ながら)】
「〇〇さん、ここの姿勢分析の写真と前回のデータを見てください。骨盤が少し後傾して、仙骨の周りの筋肉がかなり緊張していますよね。実は医学的に、ここが硬くなると骨盤内の血流が滞りやすくなるので、人によっては『冷え』や『重い生理痛』が出やすくなるんですが、思い当たる節はありますか?」
➔ (患者様の心理:画面を見ているから目が合わなくてラク。しかも「私の個人的なこと」ではなく「医学的な構造の結果」として聞いてくれているから、答えやすい)

このように、視線を「データ(画面)」に逃がしてあげるだけで、女性患者様の心理的ハードルは劇的に下がります。

3. 個人の問題ではなく「解剖学・生理学の必然」に翻訳する

上記の会話例でもう一つ重要なテクニックが、「女性特有の悩みを、骨格や自律神経(解剖学・生理学)の言葉に翻訳してアピールすること」です。

「生理痛」や「PMS」といった言葉を、患者様の「個人的な体質の問題」として扱うのではなく、「現在の骨格の歪みや自律神経の乱れが引き起こしている、医学的に当然の現象(結果)」として提示するのです。

  • 「生理痛がつらいんですね」ではなく、
    ➔ 「この骨盤の歪みと腹圧の低下があると、子宮周りの血行が阻害されるので、痛みが出やすくなる状態になっていますよ」

  • 「更年期でつらいですか?」ではなく、
    ➔ 「背骨のこの部分(自律神経の通り道)の緊張が強いと、ホルモンバランスの変動に身体がついていけず、のぼせや頭痛が出やすくなるんです」

このように伝えると、患者様はどう感じるでしょうか。
「この先生は、男性だけど私の体の構造から『なぜ辛いのか』を論理的に理解してくれている!」と、プロフェッショナルとしての圧倒的な信頼を抱きます。

共感(感情)で寄り添うのが難しい男性施術者だからこそ、客観的なエビデンス(論理)で寄り添うことが最強の武器になるのです。

4. さいごに:言いにくいことは「書かせる」システムを構築する

2026年、ウェルネスへの関心が高まる中で、女性の不定愁訴に対する整骨院・鍼灸院のニーズはますます拡大しています。
男性施術者がこの分野で活躍するためには、コミュニケーションの工夫に加えて、「言いにくいことを、言わずに伝えられるシステム」を構築しておくことが不可欠です。

例えば、初診時の問診票をスマートフォンで事前に入力できるWeb問診にし、「冷え・生理痛・月経不順・更年期の症状」などのチェック項目を設けておく。
直接言葉に出さなくても、患者様が「チェックマーク」をつけるだけで済む環境があれば、それだけで先生は「カルテ情報」という強力な事前データを持って治療に臨むことができます。

対面での気まずさを排除し、電子カルテの画面という「客観的な事実」を一緒に見つめながら、解剖学の視点で不調を紐解いていく。

この夏、もし「なんとなく言い出しづらそうにしている」女性患者様がいたら、ぜひスマートフォンやタブレットの画面を一緒に見ながら、プロフェッショナルとしての見立てを伝えてみてください。
その配慮と知識が、他の院には絶対に真似できない「この先生にずっと診てもらいたい」という強固なリピートへと繋がるはずです。

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矢野 敦子

著者

矢野 敦子

株式会社クロスリンク代表取締役 兼 マッサージコンシェルジュ®️

新卒で凸版印刷株式会社に入社し営業職に従事。途中、株式会社博報堂へ出向し大手自動車会社のプロモーション戦略の企画立案から実施までを行う。

その後、株式会社エムアウトに参画。新規事業の立ち上げを経験したのち、2010年に株式会社クロスリンクを設立。2012年に株式会社エムアウトからMBOを実施し、現在に至る。

2022年度東京女性経営者アワード「持続経営部門」受賞

【公式】X(旧:Twitter)

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